思い出を残す?刷新する?実家の建て替えを考え始めたら最初に読む記事

親が高齢になり、実家の空き家化や老朽化が現実味を帯びてくると、「この家、どうしたらいいのか…」という悩みがじわじわと押し寄せてきます。特に築年数が古く、耐震性や設備に不安がある場合、「建て替えた方がいいのでは?」という選択肢が頭をよぎることも少なくありません。


けれども、ただの住宅ではないのが“実家”という存在。自分が育った家、親の思い出が詰まった空間を壊すことにためらいを感じるのは、むしろ自然なことです。加えて、建て替えには大きな費用や手続きが伴い、兄弟姉妹との話し合い、親の意向など、感情と合理性がせめぎ合う局面も避けられません。


こうした複雑な状況の中で、焦って判断するのではなく、まずは「考える材料」をそろえることが重要です。建て替えが適しているのはどんなケースなのか、どんなメリット・デメリットがあるのか――。この記事では、そうした判断の軸を整理しながら、実家をどうするか考え始めた方が最初に押さえるべきポイントをお伝えします。




建て替えを考えるきっかけは「安全性」と「住みやすさ」

実家の建て替えを検討するタイミングは人それぞれですが、共通しているのは“暮らしへの不安”が高まっている状況です。例えば、以下のようなきっかけで考え始める方が多いようです。


1つ目は「耐震性の不安」です。1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は、大きな地震に耐えられない可能性があるとされており、実際に倒壊事例も多く報告されています。耐震補強という選択もありますが、建物の構造や劣化状況によっては、補強より建て替えの方が現実的な場合もあります。


2つ目は「住宅設備の老朽化」。水まわりや電気配線、断熱材などが古くなると、修理や交換にかかる費用もかさみます。加えて、断熱性や気密性が低い住宅は光熱費も高く、結果的に長期的なコストが増える可能性があります。


3つ目は「住まう人の変化」。親が一人暮らしになったり、将来的に自分たちが同居を検討したりするケースでは、バリアフリー化や間取りの変更が必要になることも多いです。このとき、リフォームで対応できる範囲か、建て替えたほうが柔軟に対応できるのかがポイントになります。


これらの要因が重なっている場合は、「建て替えたほうが将来的に安心で快適に暮らせるのではないか」という発想が自然と出てくるものです。ただし、それは「今すぐ建て替えるべき」という意味ではなく、選択肢の一つとして冷静に検討する価値がある、ということです。




実家を建て替えるメリットと、それでも迷う理由

建て替えの最大のメリットは、「新しい家をゼロから設計できる」ことです。耐震性・断熱性・省エネ性能をすべて最新基準にできるほか、将来的な介護や子世帯との同居も見据えた間取り設計が可能になります。ライフスタイルの変化を受け入れやすく、長期的に見て快適性・安全性・経済性が高い住まいを手に入れられる点は、リフォームにはない強みといえます。


加えて、不動産としての「資産価値」も上がる傾向があります。古い住宅は市場評価が低く、売却や相続時に課題となることがありますが、建て替えによってその価値を大きく高めることができるのです。


とはいえ、建て替えをためらう理由もまた明確です。やはり一番大きいのは「思い出との決別」。育った家を壊すという行為には、感情的な葛藤がつきものです。また、親が今の家を強く気に入っている場合、その意思を無視して進めるわけにもいきません。


さらに、建て替えには相応の費用と時間がかかります。解体工事から仮住まいの手配、設計・確認申請・着工・完成まで、少なくとも半年以上、場合によっては1年近くかかることもあります。


このように、建て替えにはメリットも多い一方で、「簡単には割り切れない」事情があるのも事実です。だからこそ、必要なのは自分たちの価値観を整理し、家族とじっくり話し合いながら、納得のいく判断を導き出すプロセスなのです。




リフォームで対応できること、できないこと


実家の建て替えに迷ったとき、多くの方が一度は「リフォームでどうにかならないか?」と考えます。確かに、費用や工期の面ではリフォームのほうが負担が軽い傾向があり、思い出の詰まった空間を残すこともできます。


ただし、リフォームには“できること”と“できないこと”があります。例えば、キッチンや浴室、トイレの設備を新しくしたり、内装や外壁を美しく整えたりすることは比較的容易です。また、間取りの一部を変更して生活動線を改善することも可能です。こうした部分的な改修は、短期間で快適性を向上させるには効果的な手段です。


一方で、「家の構造そのもの」に関わる改修、たとえば柱や梁の補強、耐震性能の大幅な向上、断熱性や気密性の抜本的改善となると、費用や工期が一気に跳ね上がります。しかも、建物全体のバランスを考えながら部分的に補強するのは難しく、結果的に“思ったほどの効果が得られなかった”ということにもなりかねません。


また、既存の間取りや柱の位置によっては、理想とするレイアウトが実現できないケースもあります。バリアフリー化したくても、段差をなくせない構造だったり、動線を変えられなかったりといった制約が出てくることも。


要するに、リフォームは「今の家の枠の中で何ができるか」を追求する手段であり、ゼロから暮らしを再設計する建て替えとは根本的にアプローチが異なります。


もし今の住宅に深刻な老朽化や構造的な不安がある場合は、リフォームで対応できるかどうかをプロの目で判断してもらうのが得策です。そのうえで、「リフォームでは限界がある」と分かったときに、初めて建て替えを前向きに考えるという流れも自然です。




家族・親族と“気まずくならない”ための進め方


実家の建て替えには、もうひとつ大きな壁があります。それが「家族との意見のすり合わせ」です。とくに親が健在で、なおかつ同居を予定している場合や、兄弟姉妹で相続の共有があるケースでは、建て替えに対しての温度差が生まれやすくなります。


よくあるのは、親が「今の家が気に入っている」「変えたくない」と強く望んでいるケースです。この場合、たとえ家の安全性や機能面での改善が必要だと分かっていても、頭ごなしに建て替えを進めようとすると、感情的な反発を招きかねません。


そこでまず大切なのは、対話の「順番」と「タイミング」。最初から建て替えの話を切り出すのではなく、「最近この家の寒さが気にならない?」「お風呂の段差、ちょっと危ないよね」といった日常の中の“気づき”を共有するところから始めるのが効果的です。


また、兄弟姉妹がいる場合は、できるだけ早い段階で現状と将来の方向性について情報共有することが望ましいです。相続時に話し合うのでは遅く、相続前の今だからこそ、各自の考えを出し合うことで軋轢を回避できます。


建て替えに限らず、大きな決断をするときには「一人で決めない」ことが何よりも大切です。家族にとって実家とは、単なる建物以上の意味を持つ場所。だからこそ、じっくりと時間をかけて、お互いにとって納得のいく着地点を見つけることが、後悔のない選択につながるのです。


実家の建て替えに関する具体的な検討や相談を始めたい方は、下記のページから事例や進め方の情報をご覧いただけます。

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いまの実家と、これからの暮らしに向き合う


「建て替えるべきかどうか」――この問いに、正解はありません。あるのは、家族それぞれの想いと、将来を見据えた判断の積み重ねです。

今の家を残すことにも、建て替えることにも、それぞれの価値があります。だからこそ、焦らず、迷いながらでも、自分たちなりの答えを導き出していくことが大切です。


まずは、「実家をどうしたいか」ではなく、「どんな暮らしをしたいか」を家族と話すところから始めてみてください。そうすれば、建て替えが最良の選択かどうかは自然と見えてくるはずです。


建て替えを前提にせずとも、まずは疑問や不安を誰かに話してみるだけでも、気持ちが整理されることは多いものです。

もし話を聞いてくれる専門家がそばにいたら、思いがけないヒントが見つかるかもしれません。


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